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▼パラドール紀行(Ciudad Rodrigo)

東京都 O-Shohei様


Ciudad Rodrigoのバス停から、城壁に囲まれた小高い丘を眺めた。そこが、旧市街地であり、パラドールの建つ場所であろう。そう見当をつけて、20kg弱のリュックを背に、なだらかな坂道を登った。 見た目にはすぐ近くのはずが、なかなかどうして距離がいっこう縮まらない。城壁の前にたどり着いたときには、冬だというのに玉の汗が流れていた。
さて、日本で「城」というと、地域のシンボルといえるだろう。周囲の建物より、ひときは目を引く存在であろう。
それほど広くないCiudad Rodrigoの旧市街地を、かれこれ30分はさまよっているだろうか。体力も限界に近づいているのに、城らしき建物が、どうしても見つからない。 タクシーで行けばよかった・・・本気でそう思った。


やおら、それは突然あった。けれど第一印象は、「城」というより、むしろ「櫓」といった感じで、正直がっかりした。看板がなければ、素通りしていたかもしれない。 中に入ってみると、その奥行きの広さに驚いた。じつに、炭鉱の穴のように、奥へ奥へとつながっていた。私の部屋は、その横穴のちょうど真ん中くらいであったように思う。部屋に入って、日本から持参のティーパックでほうじ茶を飲んだ。やっと一息ついた。 しばらくして、城内をぶらぶら散策していると、中庭があると教えてもらった。いくつかの扉をくぐり、中庭にでた。植え込みや木立が、そう広くない敷地に、かわいらしくあった。夕暮れが近いのか、風が冷たい。ふと奥のほうに目をやると、アーチ型に刈り込まれた植え込みが見えた。ぜひくぐっておこうと思った。
ああ・・。思わず感嘆がもれた。そこから見える景色は、ここが城であることを、何も言わず、私に語って聞かせた。遠くまで開けた地に、川があり、橋がある。教会があり、家々があり、人々がいた。川べりの草地に馬もいた。かつて、土地の支配者も、こうして領地を眺め、人々の生活を眺め、ここに立ったに違いない。鉛色の空に、かすかにのぞく茜色の帯。川面に映る空は、やはり鉛色の輝きを放っていた。
もうすぐ日暮れの頃だろう。夕食前に街に出て、一杯やってこよう。
すっかり城の主になりきってしまった私…夕闇にまぎれて、こっそり城を抜けだそう。

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2006年08月21日 17:14に投稿されたエントリーのページです。

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